生き物たちと対話する米づくり

新しい風さとやまは、自然と共存する新しい社会をつくる挑戦として始まりました。目標は、霞ヶ浦流域に広がる谷津田保全による水源地再生と生物多様性回復、そして霞ヶ浦の再生です。そんな大きな事は出来ないと思われる方もいるでしょう。しかし、出来ないと諦めている限り、社会を変えることも霞ヶ浦を再生することもできません。

新しい風さとやまは、延べ34万人の子どもや大人が参加したアサザプロジェクトから生まれた会社です。アサザプロジェクトは、多様な人々との協働により日本で二番目に大きな湖沼である霞ヶ浦とその流域を自然と共存する持続可能な社会に変えていく様々な取り組みを1995年から行ってきました。
持続な可能な社会は、人や自然や社会の多様性や複雑さを生かすことによってこそ実現するものだと、私達は考えます。

新しい価値は、生産性や効率性を重視した画一的な世界ではなく、人々が多様さに価値を見い出し複雑さを生かし創造的に生きる世界にこそあると信じています。
私達は、経済の世界に一石を投じたいと思いこの会社を作りました。
谷津田の田んぼは一枚一枚がとても個性的です。土や水や生き物達との対話を抜きにして、画一的な技術で臨んでも米作りはできません。江戸時代の民間農業指導者たち老農のような人格を持つ技術を取り戻すことが不可欠です。人格を持つ技術とは、その人その土地に合わせた対話する技術だと思います。
私達のフィールドは広大です。社会そのものです。多様な人々や組織との対話や協働を広げなければ、私達の取り組みを霞ヶ浦流域に広げていくことはできません。
私達は今、忘れられた里山の一枚一枚の田んぼから、生き物達や多様な人々との対話の輪を広げています。皆さんの食を通して、あるいは、田んぼや里山での作業体験を通して、多くの方々に新しい社会づくりに参画をしていただきたいと思っています。

見捨てられ荒廃した田んぼの再生作業から始まります。

図1  草刈

私たちが米作りを行う田んぼ、谷津田の多くが上の写真のように荒廃しています。背の高い草で覆われかつてここに生息していたトンボやカエル、ホタルなどに必要な水面は完全になくなっています。里山に生息する多様な生物の多くがこのような谷津田の荒廃によって姿を消しています。水源地である谷津田の荒廃は、霞ヶ浦など下流に位置する水環境にも深刻な影響を与えます。

生き物と対話する米づくりの実践

・谷津田は、もともと周りを囲む森からの湧き水を水源にして作られた田んぼです。温度が一定で夏涼しく冬温かい湧水は、里山で生きる生き物たちにとって貴重な生活の場になっています。私達は、湧水をできるだけ生かした米作りを行い、生き物たちの住み良い環境作りに心がけています。

・苗づくりから収穫、お米の保管に至るまで、農薬や化学肥料を一切使用していません。新しい風さとやまの田んぼは、トンボやクモやカエルなどの捕食者がたくさん生息しているので、害虫による被害が生じたことはありません。稲も命の賑わいの中で元気に育ちます。

・通常の田んぼよりも稲を植える間隔を空けて、生き物たちが田んぼ内で生息しやすい環境作りを行っています。稲の間に水面が見えることで、普通の田んぼよりも多種多様な生物が生息するようになります。特定の虫などが異常発生することで害虫化することも防げるので、稲もスクスクと育ちます。

・田んぼの畔にも、除草剤等は一切使用しません。畔には、多様な野草が生育できるように心がけ、蝶や野鳥などの使いやすい環境づくりを行っています。

・田んぼの水管理は、それぞれの田んぼに生息する生き物たちと相談しながら行っています。例えば、アカガエルやヒキガエルが生息する田んぼでは春に卵を産めるように早くから田んぼに水を張っておきます。田んぼで冬を越すメダカやヤゴや水生昆虫のために湧き水による水溜りを田んぼの中に作ります。生きものたちに大きなダメージを与える中干しは一切行いません。稲刈り後の田んぼの泥に卵を産むアキアカネのために水溜りを残します。

・田んぼの耕作放棄とともに森林の荒廃も進んでいます。森林が荒廃すると湧水も減ってしまいます。田んぼへの湧水を復活させるために、NPO法人アサザ基金と協働で森林の手入れ作業も行っています。手入れされた森には、田んぼで生まれた若いトンボやカエルなどがたくさん住み着くようになります。

・谷津田は、森に囲まれた谷間にあるため周りからの農薬の影響を受けにくく、湧水を利用するため下流の河川や湖沼からの農業用水と違い水汚染の影響もありません。何十年も耕作放棄されていた田んぼでは、農薬の影響も無くなっています。そのため、一度谷津田が再生され無農薬栽培が始まるとどこの谷津田でも生き物が爆発的に増えてきます。このような谷津田から谷津田へと、霞ヶ浦流域全体を覆う谷津田のネットワークに沿って生き物たちが広がっていけば、広大な地域に生き物溢れる環境を取り戻して行くことができます。

 

里山の田んぼの1年

田植え 5-6月
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草取り  稲の生長 5-8月

草取り sIMGP3278

稲刈り 9-10月   天日による自然乾燥

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籾摺りと精米みなさんにお届けするお米は、籾で保管しています。発送直前につきたての玄米か白米に精米調整を行い、みなさまのお手元にお届けしています。苗づくりからお米の発送まですべて自分たちで行っています。

 さとやま米

こちらの精米工場で精米調整しています。無農薬のお米では虫食いなどで着色粒ができてしまいますが、そういったものを選別除去したお米をお届けします。